梨穂・佳奈

プロローグ


梨穂と佳奈の出会い

[転校生・梨穂] by JAGI
6月の始め、星淑女学園高校の2年C組に、季節はずれの転校生が来ました。梨穂ちゃんです。
梨穂ちゃんは、たった一人の家族のお父さまが交通事故で亡くなって、一人ぼっちになってしまいました。でも、おばさまの世話でこの学園に転校して、寮に入ることになったのです。
それまで梨穂ちゃんは製薬会社の役員だったお父さまと二人で暮らしていました。 お母さまは、梨穂ちゃんがまだ小さい頃に離婚してしまいました。 だから梨穂ちゃんはお母さまの顔を覚えていないし、お母さまに可愛がってもらった思い出もありません。

でも、時々お家に尋ねてきていたおばさまがとてもよく面倒を見てくれて、梨穂ちゃんにとってこのおばさまがお母さまのかわりでした。

おばさまは玲子さんといいます。お父さまの妹で、お医者さんです。おばさま、というけれど、玲子さんは独身で若々しく見えるので、おばさまと呼ぶのは似合わないみたいです。
梨穂ちゃんは、この美しいおばさまがなぜ結婚していないのか不思議でした。玲子さんは大学での研究で成功して、有名人だったそうです。きっとあんまり研究に熱心だったので結婚のチャンスがなかったんだろうと梨穂ちゃんは思っていました。

2年C組は梨穂ちゃんを温かく迎えてくれました。梨穂ちゃんは小柄で、小学生ぐらいにみえます。実は、梨穂ちゃんの身体は子供のままなのです。胸は膨らんでいないし、体毛もありません。初潮も迎えていないのです。身体のことを引け目に感じていた梨穂ちゃんは、ちょっと引込み思案で、みんなとにぎやかにするのが得意でありませんでした。でも、新しい友達たちは梨穂ちゃんの転校の事情を尋ねたりせず、いつも梨穂ちゃんを取り巻いて一緒に楽しく過ごしました。

なかでも一番のなかよしは、寮で同じ部屋になった佳奈ちゃんです。 佳奈ちゃんは梨穂ちゃんと正反対、背が高くてたくましくて、男の子みたいにいつも元気いっぱいです。佳奈ちゃんは水泳選手で、スポーツ特待生として遠くから入学してきたんだそうです。

梨穂ちゃんは、少しでも佳奈ちゃんと一緒にいたくて、水泳部のマネージャーになることにしました。梨穂ちゃんはこれまでいつも子供扱いされて一人前のことをさせてもらえませんでした。でも、マネージャーの仕事をするようになってからは、逆に梨穂ちゃんが水泳部の選手のみんなの世話をするのです。そして、梨穂ちゃんがよく気が付くので部員のみんなが喜びました。梨穂ちゃんにとってこんなにうれしいことはありません。お父さまを失って悲しみに沈んでいた梨穂ちゃんも、だんだん元気になっていきました。

今日の練習も終わって、佳奈ちゃんがプールから上がってきました。梨穂ちゃんが声をかけます。
「お疲れさま。はい、タオル!」
「ありがと。ひゃー、もうクタクタぁ!」
二人は並んでプールサイドを歩きます。

[プールサイドを歩く二人] by JAGI

「来週からタイム取るんだよね。」
「もう大会が近いから調整していかなきゃ。いまちょっと伸び悩んでるしね。」
「大丈夫だよ!これまでだって抜群のタイムでしょ?」
「うーん...まず自己記録更新が目標だけど」
「うぅん、きっとこの夏は高校新だよ!」
「アハハハ、調子良すぎるよっ!」
佳奈ちゃんは照れ笑いしながら梨穂ちゃんの背を軽く叩きました。すると、
「あ、いたっ!」
と言って梨穂ちゃんは立ち止まりました。
「え、どうしたの?」
佳奈ちゃんがのぞきこむと、梨穂ちゃんの右膝がすりむけて、血がにじんでいます。
「あたた、飛び込み台にぶつけちゃった...」
「ごめん、あたしが突き飛ばしたから?大丈夫?」
佳奈ちゃんがしゃがんで梨穂ちゃんの膝を見ると、傷から溢れた血がツっと伝い落ちました。
「わたしが悪いの、横向いて歩いてたから...大した事ないよ、キズバン張ればおーけー」
「...本当にごめんね、でも手当てしなきゃ。保健室に行こ?」
手当てがいるほどの傷だとは梨穂ちゃんは思いませんでしたが、気ずかってくれる佳奈ちゃんの気持ちが嬉しいのでした。二人は保健室に行きました。

「先生、みえますか〜ぁ?」
保健室の扉を開けるなり、佳奈ちゃんは大声で呼びました。
「はい?」
机の前に座っていた人が立ち上がってこちらに向きました。
それは梨穂ちゃんのおばさまの玲子さんでした。
玲子さんは自分の病院を開いているのですが、週に1〜2度、スポーツドクターとして星淑女学園に来ているのです。
「保健の高橋先生はついいまお帰りになったけど...どうしたの?」
「梨穂ちゃんが膝を怪我しちゃったんです。」
「あら、大変。」
玲子さんは梨穂ちゃんを丸椅子に座らせました。
「ほら、よく見せて」
玲子さんも腰を下ろすと、梨穂ちゃんの膝に顔を近づけるように身を乗り出します。
すると、玲子さんの白衣が突っ張って、襟が割れました。梨穂ちゃんは、その胸元を見下ろして、はっと息を呑みました。玲子さんは、白衣の下に服を着ていなかったのです。
大きくはだけた胸には二つの真っ白な丘がむっちりと盛り上がって、それを支える黒いレースのブラジャーの縁までが見えています。
「はいはい、じゃ消毒してお薬塗っておきましょうね。」
声をかけられても梨穂ちゃんの目は玲子さんの胸にくぎづけになって、返事も上の空です。
「すみません...お願いします...」

[胸をはだけた白衣姿の玲子] by YuAoki
お薬を塗る間、玲子さんはうつむいて梨穂ちゃんの膝を見つめています。梨穂ちゃんの目の前でくりくりと動いている玲子さんの額は、もし、いま梨穂ちゃんがちょっとかがんだらキスできちゃうぐらい近くにあります。
(きれい...玲子さんってほんとうにきれい...)
柔らかそうな髪、きめ細かい肌、それに豊かすぎる胸...こんなに近くで熟れた女性の美しさを見せ付けられて、梨穂ちゃんはすっかり魅入られて目をそらすことができません。自分にはぜんぜんないけれど、玲子さんにはありあまっている女の印に梨穂ちゃんはすっかりあてられてしまいました。そのとき、梨穂ちゃんは、なにか甘いにおい、しっとりとなじむ湿り気のような雰囲気を感じました。
(なんだろう、いい匂い...大人の女の人って、こんな匂いがするのかな...)
(玲子さんの手ってすべすべで柔らかい...)
(肌を触られるのがこんなに気持ちいいなんて...)
(わたしも玲子さんの肌にふれてみたい...)
(あの胸に触ったら...きっとすごく気持ちいいんだろうな...)
梨穂ちゃんはとりとめのない考えを浮かべて、玲子さんの優しい手に癒されながら、夢見心地になっていました。ずっとその間も梨穂ちゃんの目は玲子さんの白い胸を見つめ続けていました。
「はい、いいわよ。もう大丈夫」
玲子さんの声に梨穂ちゃんは目を覚ましました。玲子さんは顔を上げ、梨穂ちゃんの目を見つめて微笑んでいます。見つめられていることに気づいて、梨穂ちゃんは急に顔が熱くなりました。自分だって女の子なのに、女の人の体を見てこんなに夢中になるなんて...

「あの、玲子さん...あのぅ...見えちゃってますぅ...」
やっとそう言うと、梨穂ちゃんは真っ赤になった頬を両手で隠しながら先生の胸元から目をそらしました。
「あ...」
玲子さんはすぐに気づいて白衣の襟をかきあわせながら、言いました。
「恥ずかしいわ...ごめんなさいね、だらしないところ見せて...今日、すごく暑かったからブラウス脱いじゃったのよ...それにこの白衣、小さくて突っ張っちゃって...」
梨穂ちゃんがちょっとだけ玲子さんの白衣に視線を戻すと、胸の膨らみの上で両襟を左手で寄せて掴んでいるのが見えました。でも、襟を引っ張ったせいか、かえって白衣がぴったりと肌にくっついて、ブラジャーのレース模様までくっきりと透けています。どうやっても隠し切れない玲子さんの熟れた肉体が発散する色香を見せ付けられて、ますます梨穂ちゃんの顔は熱くなってしまいました。まだあの甘い匂いが漂っていました。

 帰り道、まだ火照りのさめない梨穂ちゃんは佳奈ちゃんに話しかけました。
「あのね、さっき、玲子先生にお薬塗ってもらってたらね...」
「うんうん?」
「なにか、いい匂いがしたの。」
「...香水?」
「ううん、違う。香水とか化粧品とか、そういう匂いじゃなくて...なんだか、ふわっと...包み込まれるような感じがして。」
「ふーん...なんだろうね。」
「...なんだろう...これが女の人の匂いなのかなー、って思った。」
「玲子先生って、おとなー、って感じだもんね。」
「そうそう。大人の...オンナ...って感じがする...あー、憧れちゃうな!...」
また梨穂ちゃんはさっきの光景を思い浮かべてうっとりしかけたのですが、突然うしろから抱きしめられて驚きました。
「梨穂ちゃんはどんな匂い〜?」
佳奈ちゃんがふざけて抱き付いてきたのです。佳奈ちゃんの頬が梨穂ちゃんの首筋にくっつきます。梨穂ちゃんは息を止めて言葉を待ちうけます。
「あ、これは...」
なにかを嗅ぎあてたのかと梨穂ちゃんはビクっと身をすくめます。
「...間違いないよ、この匂い...そうだ、今晩のご飯はカレーっ!!」
佳奈ちゃんはすぐに腕をほどくと梨穂ちゃんの手を引いて寮へ駆け出しました。
梨穂ちゃんはおかしくってクスクス笑いながら、一緒に走りました。そして、ちょっとだけ考えました。
(じゃ、佳奈ちゃんはどんな匂い?...)
さっきあんなに接近した佳奈ちゃんですが、玲子さんのような匂いはしないみたいです。もう一度、玲子さんのような匂いを感じたいな、と梨穂ちゃんは思いました。

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